夏バテが引き起こす「胃腸バテ」とは?
ちょっとした工夫で元気に暑さを乗り切ろう!

夏バテは、体力を奪われるだけでなく、胃や腸の不調にも影響を与えます。
元気に過ごせるよう、対策法をご紹介します。

この記事の監修医師
東京女子医科大学附属東洋医学研究所 所長、教授
木村 容子(きむら・ようこ)先生

夏バテだけでなく秋バテも!?

夏の暑さに体力を奪われてぐったりする「夏バテ」。アイスクリームやかき氷、アイスコーヒーなど、冷たい物が欲しくなりますよね。また、キンキンに冷えた生ビールも渇いたノドにはたまりません。

実は、夏バテの影響は、夏だけで終わりません。昨今、秋バテを訴える人も増えています。夏の間、気の向くままに涼を求めた結果、秋風を感じる9月頃になっても、疲れやだるさから抜けられなくなってしまうのです。

しかし、恐れることはありません。漢方の知恵を知れば、ちょっとしたケアで、夏バテ・秋バテにならないようにできますよ。
具体的に説明していきましょう。

夏の胃腸は過労状態!漢方の教えとは

漢方では、心身の生理機能を司るところとして「五臓(肝、心、脾、肺、腎)」という考え方があります。「脾(ひ)」は、胃腸などの消化器系の機能を表しています。日々の活力(=気)は、胃腸で作られると考えられており、胃腸の働きが悪くなると、活力が作れなくなる(気虚)ため、カラダがだるく疲れやすくなると解釈されます。

ただ、「夏バテになりたくない、しっかり食べなければ!」と無理して食べるのもあまりよくありません。胃腸に負担をかけ過ぎると、胃腸が「過労状態(胃腸バテ)」に陥ってしまうからです。

冷たい食べ物・飲み物が、さらに胃腸バテを加速させることも

トマト、きゅうり、冬瓜、スイカ、バナナ、マンゴーなど、夏の旬の食材や南国で作られる食材には、カラダを冷やすものが多くあります。一見、暑さを凌ぐには理にかなっていますが、こうした食材を冷房の効いた部屋で食べることで、さらにカラダを冷やしてしまいます。カラダを冷ますという本来のねらいを越え、現代生活では胃腸を冷やしすぎる場合があるのです。

「脾(ひ)」の働きが悪くなると、胃もたれや消化不良、お腹の張り、下痢などの便通異常が起きます。こうした症状が、胃腸の機能低下のサインなのです。

「冷たさ」だけでなく、栄養もチェック!

近年経験するような猛暑では、素麺やお茶漬けなどのあっさりとした食事や、喉ごしのよいジュースや清涼飲料水、ゼリーやアイスクリームばかりが欲しくなりますよね。

このような食生活を続けると、炭水化物(糖質)は十分でも、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が不足し、栄養の偏りから代謝が低下してしまうことがあります。あまり食べてもいないのに、かえって体重が増えてしまうのはそのためです。

特に45歳から55歳頃までの、いわゆる更年期世代は要注意です。このような体質の変化を見過ごすと、更年期の症状を悪化させたり、老化を早めたりする可能性がでてしまうので、夏の食事法でケアしていきましょう。

おいしく食べて、バテ&太り知らずに!

では、「夏バテ・秋バテ」や「夏太り」にならないようにするには、どうすればよいのでしょうか。ずばり、胃腸の働きを高めておいしく食べる力を養うのが重要です。

夏バテでは、冷たいものを食べて胃の張りを感じたり、1-2時間後くらいで下痢やだるさに襲われたりといったことがあります。胃腸の働きが低下している「胃腸バテ」かも知れません。そのようなときは、胃腸を冷やさない注意が必要です。

例えば、よく冷えた飲み物で喉ごしを満足させたなら、2杯目からは氷を少なめにしたり、常温に近い飲み物にしたりするよう心掛けましょう。アイスクリームなどの冷たい物を食べることで腹痛や下痢をしやすい人は、白湯などの温かいものを一緒に取っておくとよいでしょう。

日本では、古くから胃腸を冷やしすぎない工夫が、生活の中に溶け込んでいます。例えば、夏の定番、冷やし素麺や冷や奴には、ショウガを添えたり、ネギやシソと一緒に食べたりという習慣があります。日本古来の薬味は、カラダを温めるものが多いのです。胃腸バテが心配になったら、大いに薬味を活用しましょう。

胃腸バテになってしまったときの対処法

胃腸バテをこじらせてしまうと、病院での治療が必要になるなど、元に戻すのはとても大変になります。胃の不調を訴える患者さんには、食べ方の指導をしたうえで、胃の消化力を助ける漢方薬を処方します。漢方薬には、胃の余分な「湿(水分)」を除く働きで、食欲不振、消化不良や膨満感を改善してくれる生薬、気の働きを整えて胃の機能を促進してくれる生薬などが入っています。

普段から、胃の働きが鈍く感じる、お腹が張る、だるいなど、「ちょっと変」や「ちょっといつもと違う」といったサインを見逃さないようにしましょう。
「ちょいバテ」の段階で早めに胃腸の働きをサポートしてあげることがポイントです。

胃のトリビア!「胃は五臓の本」

元気がみなぎっている人のことを「ガッツのある人」といいますよね。「ガッツ」は英語で“guts”と表し、消化管のことを意味します。つまり胃腸の働きがよい人は元気がある人ということです。面白いことに、胃腸が元気の素であるという考え方は洋の東西を問わず共通しています。

約2000年前の中国古典『黄帝内経素問』は、『胃は五臓の本』と書かれています。つまり、五臓の栄養はみな胃によってまかなわれているという意味です。日々の活力・活動のエネルギー(=気)は胃腸で作られ、五臓に栄養として分配されます。これを「気を巡らせる」などとも呼んできました。

カラダを巡る気を作り出すのは胃ですから、「健康の基本は胃腸、特に胃にある」といえるでしょう。だから、ちょっとした胃の不調を感じる人は、放っておかずに早めのケアが大切です。

ちょっとした胃の不調の
チェックポイント!

  • なんとなく胃がもたれる
  • 胃の不調が繰り返しおこる
  • 食べ物が残っている感じがする
  • 食後に胃がもたれやすくなった
  • 油っぽいものが苦手になってきた
  • 無理をすると胃に不調がおきやすい
  • 鎮痛剤、かぜ薬などを服用すると胃に不快感が出やすい
このような症状のある方は、食事の工夫はもちろんですが、不調を感じたときは無理をせずに、お薬の力をかりるのも一つの手です。胃腸薬は市販もされています。

この記事の監修者情報

東京女子医科大学附属東洋医学研究所 所長、教授
木村 容子 先生 (きむら・ようこ)

資格・専門分野

医学博士、日本内科学会認定医、日本東洋医学会専門医、指導医、理事

資格・専門分野

医学博士、日本内科学会認定医、日本東洋医学会専門医、指導医、理事

経歴・賞等

  • 2002年より東京女子医科大学に勤務
  • 2008年 日本初の「漢方養生ドック」をはじめる
  • 2017年 第29 回日本東洋医学会 学術賞受賞

著書

  • 女40歳からの「不調」を感じたら読む本
  • 女50歳からの「不調」を感じたら読む本
  • 太りやすく、痩せにくくなったら読む本