知ってびっくり!胃の世界

胃粘液バリアー

[第2章] 胃粘液の働きと胃粘液分泌に影響を与えるもの

「もし、胃粘液がなかったら?」胃はどうなるのでしょうか?

食物は、口内で咀嚼され、ある程度の大きさの食塊となって胃内に移動します。胃は食物をなお細かく破砕し、それらを一時的に貯える貯蔵庫の役割をはたしています。すなわち、食塊は蠕動運動で胃液と十分混ぜ合わされて消化・分解され、どろどろした粥状にかたちを変えてチューブから絞り出されるように少量ずつ時間をかけて十二指腸へと送り出されます。
胃の粘膜から分泌される胃液には胃酸、蛋白質を分解する酵素のペプシン、粘液が含まれています。胃酸はpH1~2の強い酸性を示し、外部から食物などと一緒に取り込まれた細菌の殺菌や腐敗防止にあたります。胃での消化・分解はペプシン、胃酸により行なわれますが、十二指腸以降の本格的な消化・吸収を行なうための予備的な準備段階といえましょう。粘液は胃のすべての場所でつくられ、粘膜表面を覆って潤滑性を保ち、摂取した食物との接触によって起こる粘膜の損傷を防いでいます。一方では、食物を包み込んで混和し、蠕動運動を助けて食塊の移動を容易にして胃の消化作用に大いに寄与しています。

皆さんは理科の実験などで酸を扱った経験はありませんか?胃のなかでつくられる胃酸は、手につけば炎症反応を起こしてヒリヒリと痛み、表皮がはげたりするほどの強い酸ですから、胃液を取り出してその中に肉片をいれると溶けてしまいます。ところが、前章で述べましたように健康な胃では、粘液が胃を守るバリアーとして働き、強酸による障害は生じません。実際に、胃粘膜表面を覆っている薄い粘液ベール(粘液層)をはがし、粘膜を酸と接触させると出血障害が起こり、確かに粘液ベールは表層粘膜のバリアーとして機能していることが最近証明されました。胃粘液層を構成している物質の90%以上は水分ですが、粘液を特徴づける物質は特殊な構造をもつ粘液糖蛋白質で5~10%を占めます。そのほか、脂質、酵素などさまざまな物質を含んでいます。
一方、酸・ペプシノーゲン・粘液が同じ腺腔内に分泌される胃腺(胃の2/3を占める胃底腺)では、腺腔は腺粘液で満たされ、分泌された酸やペプシノーゲンは粘膜細胞に触れずに胃内に移動します。胃粘液は表層粘膜にも腺粘膜に対しても粘液バリアーとして機能していることが明らかにされています。

塩酸灌流モデルにおける胃粘膜損傷確認実験(ラット)に関する図

実験的に胃粘液層を除去したところにpH1~2の酸を流し込んで、胃粘膜に与える影響を調べた結果、胃粘液層を除去した群では胃粘膜に炎症(出血)を確認した。

学術ビデオ「胃をまもる粘液バリアー」より

胃粘液は、各種の刺激や生理的変化に対していち早く反応を示します。例えば30%以上のアルコール摂取、アスピリンなどの鎮痛剤の投薬で胃粘液量は減少し、粘膜に障害がおこります。その他ストレス、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や生理的な変化として加齢があげられます。これらの要因による粘液の変化は量的な減少に加えて質的な変化も認められ、バリアーとしての防御機能も低下します。傷んだ胃粘膜の修復には粘液が重要な働きをしますが、特定の薬剤は粘液量や粘液産生を積極的に増加させ、胃粘膜防御作用に影響を与えると考えられています。
その中でテプレノンは1984年の発売以来、長年にわたって繁用されている胃粘液増加作用を有する代表的な粘膜防御因子増強薬です。テプレノンの連続投与によって胃粘液分泌が亢進し、粘液層の厚さは非投与に比べ2.5倍も厚くなっていることが認められています。テプレノンは粘膜細胞の活性化を通じて、胃粘膜の恒常性維持に寄与しているといえましょう。

胃粘液減少へ直接的に影響を与える要因
  • ストレス
  • NSAID
    (非ステロイド性抗炎症薬)
  • エタノール
  • ヘリコバクター・ピロリ菌
  • 加齢

など

成分名 テプレノン
種類 粘液分泌促進成分
働き 胃粘膜を守る胃粘液量を増大させ、胃粘膜を守ります。

胃粘液は食物の消化を助け、バリアーとして胃粘膜を保護し恒常性を維持しています。"No mucus ,No protection"(粘液のないところでは、防御は成立しない)、「健康な胃は胃粘液に守られている」のです。

第3章では、新たな発見「ヘリコバクター・ピロリ菌に対する胃粘液の働き」についてお話します。

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